たった一曲でジャズを生き返らせてしまった女(ひと):寺井尚子
寺井尚子は、アルバム『Jealousy (ジェラシー)』一枚で、いや、冒頭のアルバム・タイトル曲「ジェラシー」一曲で僕のなかで闇に眠り込もうとしていたジャズを呼び覚まし、蘇らせてしまった。
JAZZは古典芸能化の道を歩みつつあり、暗い未来しか展望できずにいた。年寄りの慰みものとしてこのまま朽ち果ててゆくのだと。
でも表現というのは怖ろしいもので、一人のアーティストが、一つの作品が世界を一変させてしまう、というのは大いに起こりうることなのである。それを寺井尚子が再認識させてくれた。
マイルス・デイヴィスが『カインド・オブ・ブルー』でジャズの音楽風景を一変させてしまったように。
優れた表現は音楽ジャンルを、ちまちまとしたカテゴライズをやすやすと飛び越え無化してゆく。
僕の敬愛する音楽批評家にしてDJのピーター・バラカンさんが、毎週土曜日放送のNHK-FMの番組でマイルスの面白いエピソードを紹介していた。
1970年代はじめ、『オン・ザ・コーナー』などファンク色の強い音楽をマイルスはやっていたのだが、別にマイルス本人はジャズによるファンクをやろうだとか、そんな意識は全くなく、ただ自身のやりたいことを(自分がCOOLだと信じる音楽を)やっていたに過ぎない。というような話をされていて・・
素晴らしい音楽を前にするとき、ほんっと、この音楽はどういうジャンルで・・ みたいなハナシどーだっていい、のだ。
だってホラ、マイルスにしても、寺井尚子にしても、「この俺が、私が、音楽だ!」って顔してるもん。
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